新型コロナのPCR検査件数が増えないのは、さまざまな原因がある

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新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるには、感染力の高い感染者を早期に見つけ出して隔離するのが最も有効な方法です。政府は一貫してPCR検査を増やす方針で臨んでいますが、実際の検査件数はなかなか増えず、日本は他国と比較すると検査件数が著しく少ないというのが共通認識となっています。

この記事では、新型コロナウイルスの検査体制の概要と検査件数がなかなか増えない原因についてまとめました。2020年5月21日(木)現在の情報に基づいていますので、最新の情報は厚生労働省のホームページなどで確認するようお願いします。

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検査体制の概要

PCR検査の原理や手順などについては専門的すぎて説明できないので、ここでは省略します。

検査の目的

新型コロナウイルスなどの感染症の検査は、主に次のような目的で実施されます。

  • 感染症が疑われる患者について感染を判定して、適切な治療につなげる
  • 濃厚接触者について感染を判定して、感染拡大防止策を効果的に実施する

検査の重要性

新型コロナウイルスは、発症する少し前から感染力が強くなると言われています。症状が出た人は速やかに診断・検査を受けて、陽性の場合には隔離・療養することが重要です。

加えて、積極的疫学調査によって濃厚接触者を特定して、無症状なら自己隔離・健康観察をしてもらい、症状がある人は検査することが重要です。個人的には、検査態勢に余裕がある場合には、無症状の濃厚接触者も検査して早期に陽性を特定できれば感染拡大の防止につながると思います。

新型コロナの場合、無症状の感染者は無症状のまま治癒してしまうことも相当多いと考えられています。無症状の人を片っぱしから検査するのは、検査資源の浪費になるので、検査態勢に余裕がない場合には避けるべきです。

検査機関

新型コロナの検査機関は次の表のとおりです(※は検査体制が整備されている施設のみ)。この表のように、PCR検査では検体の採取を行う機関と検体の検査を行う機関があります。

検査機関検体採取検体検査
国立感染症研究所
地方衛生研究所
保健所(※)
医療機関(※)
帰国者・接触者外来
地域外来・検査センター
民間検査会社
帰国者・接触者外来とは

帰国者・接触者外来は、新型コロナウイルス感染の疑いがある人を診察する目的で医療機関に設置された外来窓口です。他の患者や医療従事者に感染しないように、動線の分離、施設内の消毒、防護具の着用などの対策がとられています。

地域外来・検査センターとは

地域外来・検査センターは、都道府県医師会等に運営を委託して、新型コロナウイルスの検査(検体採取)を集中的に実施するための施設です。センターの要員に感染しないように、施設内の消毒や防護具の着用などの対策がとられています。

検査件数が増えない原因

PCR検査件数がなかなか増えないのは、場所、人員、物資、所要時間、検査対象の基準など、さまざまな原因が絡み合っています。

検査に必要な場所、人員、物資の不足

PCR検査件数がなかなか増えない原因として、検査に必要な場所、人員、物資などの不足が指摘されています。

  • 帰国者・接触者相談センターの電話回線数、人員の不足
  • 検体を採取する場所、器具、人員の不足
  • 検査室の不足
  • 検査機器、試薬、前処理キットの不足
  • 臨床検査技師の不足
  • 感染防止対策用の物資(個人防護具、消毒用品など)の不足

対策も施されてきていますが、まだ十分に確保されたとは言えない状況が続いています。

帰国者・接触者相談センターとは

帰国者・接触者相談センターは、保健所などに設置された電話窓口で、相談者が検査対象者に該当するか確認したうえで、帰国者・接触者外来で診察・検査を受けたり、地域外来・検査センターで検査を受けたりするための調整を⾏います。

検体の搬送時間、検査の所要時間の問題

次のような作業の時間を短縮できれば、検査数の増加につながります。

  • 検体の採取と検査を行う場所が異なる場合、検体の搬送に時間がかかる
  • 検体検査には1件につき5~6時間かかる

民間検査会社の多くは関東にあるようなので、できるだけ各都道府県内の地方衛生研究所や医療機関で検体検査ができるようにすれば、全体として搬送時間を短縮できます。

また、最近承認された抗原検査キットを使えば、PCR検査より検査時間が短いので(約30分)、検査数を増やすことが可能になります。

検査対象となるまでに時間がかかっていた

PCR検査件数がなかなか増えない原因として、以下のような理由によって症状がある人でも検査対象となるまでに時間がかかる人がいました。現在はほぼ改善されたと思われます。

  • 軽症者には自宅療養が推奨されていた
  • 帰国者・接触者相談センターが検査対象を絞っていた

PCR検査対象者の基準の問題

新型コロナ感染症が疑われるPCR検査の対象者は、以下のいがれかに該当する人です(他の病因が明らかな場合を除く)。

  1. 濃厚接触者で発熱または呼吸器症状(軽症の場合を含む)が現れている人
  2. 発熱または呼吸器症状が現れる前14日以内に、流行が確認されている地域に渡航または滞在した人
  3. 発熱または呼吸器症状が現れる前14日以内に、2.に該当する人に濃厚接触した人
  4. 医師によって検査が必要と判断された人(感染症を疑う症状があり、集中治療等が必要、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができない場合)
  5. 以下のいずれかに該当して、医師が新型コロナ感染症を疑う人
  • 発熱と呼吸器症状があり、入院が必要な肺炎が疑われる(特に高齢者や基礎疾患のある人については積極的に考慮する)
  • 新型コロナ感染症以外の呼吸器感染症の検査で陽性となり、その治療をしたのに症状が悪化した場合
  • 医師が総合的な判断で新型コロナ感染症を疑う場合

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版(2020年5月18日)を参考にしました。「発熱」は37.5℃以上。

1番目の基準によると、原則として、無症状の濃厚接触者はPCR検査の対象外です。

原則として、健康観察期間中にある無症状の濃厚接触者は、新型コロナウイルスの検査対象とはならない。

しかし、濃厚接触者が医療従事者等、ハイリスクの者に接する機会のある業務に従事し、感染状況の評価が必要と考えられる場合、クラスターが継続的に発生し疫学調査が必要と判断された際には可能な限り検査を実施する。

新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(令和2年4月20日版)から引用

例外の説明が長くて分かりづらいのですが、無症状の濃厚接触者が医療従事者等なら検査対象になるようです。また、クラスターが継続的に発生した場合も無症状の濃厚接触者が検査対象になるようです。

最後の「可能な限り検査を実施する」の部分は、3月12日版の実施要領では「検査対象とすることができる」という消極的な表現でした。実施要領の更新によって、より積極的な表現になったことで濃厚接触者の数が増えると思われます。

さらに個人的には、検査能力が許す限り、医療従事者や介護従事者については濃厚接触者でなくても検査対象にして欲しいと思います。

積極的疫学調査とは

積極的疫学調査とは、感染症などの色々な病気について、発生した集団感染の全体像や病気の特徴などを調べることで、今後の感染拡大防止対策に用いることを目的として行われる調査です。

参考:濃厚接触者の定義

新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(令和2年4月20日版)では、濃厚接触者は『患者(確定例)の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者』と定義されています。

  • 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
  • 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
  • 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
  • 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、患者(確定例)と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

このうち4番目の定義は、3月12日版の実施要領では次のようになっていました。

  • 手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として 2 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者(患者の症状などから患者の感染性を総合的に判断する)。

4月20日の定義変更により、対人距離の目安は2メートルから1メートルになり、15分以上の接触という時間の制約も追加されたので、定義変更前より濃厚接触者の数が少なくなるケースが増えます

患者(確定例)とは

患者(確定例)とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者」を指します。

感染可能期間とは

新型コロナウイルス感染症の患者(確定例)の感染可能期間は、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状(発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など)を呈した 2 日前から隔離開始までの間です。

※3月12日版の実施要領では、発症した日から隔離開始までとなっていました。

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