失策続きの新型コロナ対策

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政府の一連の新型コロナウイルス対策には、勇み足や立ち遅れが目立ちました。欧米諸国に比べて感染爆発を回避して感染拡大が抑えられているのに国民の評価が低いのも当然です。

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突然の方針転換で3月から全国一斉休校

Jiji
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感染者の少ない県も含めた全国一律の休校要請は、やりすぎなのだ。

2月27日(木)に開催された政府の対策本部会合で、翌週からの全国一斉休校を要請することが表明されました。2日前の対策本部会合では感染状況に応じて地域ごとに臨時休校を検討する方針でしたが、突然の方針転換で準備時間もほとんどなく休校にしたため、教育現場や家庭に混乱を招きました。方針転換の明確な理由は不明でした。

政府といたしましては、何よりも、子どもたちの健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週 3月 2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請します。

首相官邸ホームページ「第15回新型コロナウイルス感染症対策本部会合(2020年2月27日)議事概要」より引用

結局、3月20日(金)の対策本部では、一斉休校による新型コロナまん延防止の効果がはっきりしないとして一斉休校要請を延長しない方針が決まり、感染者の少ない地域では学校を再開したところもありました。その後、緊急事態宣言が出された地域から再び休校になり、長いところでは約3か月間も休校が続きました。

東京五輪の開催延期決定の遅れ

Jiji
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外堀を埋められて延期決定。完全に後手に回ったのだ。

新型コロナが世界的に流行して、3月11日(水)に世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言を行った時点で、素人目にも東京五輪の7月開催は難しいと思われました。

しかし、日本政府や東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(東京2020組織委員会)、日本オリンピック委員会(JOC)、国際オリンピック委員会(IOC)は予定どおり7月に東京五輪を開催すると言い続けます。

今後ともIOCともよく連携をしながら、また、当然、IOCもWHOと緊密に連携をしているわけでありますから、我々としては、とにかくこの感染拡大を乗り越えて、オリンピックを無事、予定どおり開催したいと考えています。

首相官邸ホームページ「新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見(2020年3月14日)」より引用

3月17日(火)のIOC臨時理事会では予定どおり東京五輪を開催する方針が示されましたが、各国のオリンピック委員会や各国際競技連盟、トップアスリートなどから批判や延期を求める声が噴出しました。これを受けて、3月22日(日)に再び臨時理事会が開かれて、開催延期を含めて検討し4週間以内に結論を出すことが発表されました。

その後も批判は収まらず、3月24日(火)にバッハIOC会長と安倍首相が電話会談を行って東京五輪の開催延期で合意し、同日、IOCと東京2020組織委員会が1年程度の開催延期を発表しました。

予定どおり開催すると言い続けていた間、感染者が爆発的に増加し始めていた欧米からの入国制限・入国拒否に踏み切れず、水際対策に悪影響が及びました

水際対策の出遅れ

Jiji
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3月に手堅く水際対策していれば、感染規模が抑えられたはずなのだ。

欧州では、3月に入ると感染者が爆発的に増加しました。しかし、法務省(出入国在留管理庁)が所管する入国拒否の対象は、3月26日(木)まではアイスランド、イタリア(一部)、サンマリノ、スイス(一部)、スペイン(一部)だけでした。この水際対策の遅れが国内の感染拡大を悪化させた最大の要因です。

また、3月には欧州からの帰国者の中から次々に感染者が出ていたので、検疫体制にも問題があったようです。

入国拒否の対象国(欧州)
  • 3月11日
    イタリア(ヴェネト州,エミリア=ロマーニャ州,ピエモンテ州,マルケ州及びロンバルディア州)、サンマリノ
  • 3月19日
    アイスランド、イタリア(ヴァッレ・ダオスタ州、トレンティーノ=アルト・アディジェ州、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州、リグーリア州)、スイス(ティチーノ州、バーゼル=シュタット準州)、スペイン(ナバラ州、バスク州、マドリード州、ラ・リオハ州)
  • 3月27日
    アイルランド、アンドラ、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロベニア、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、バチカン、フランス、ベルギー、ポルトガル、マルタ、モナコ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク
  • 4月3日
    アルバニア、アルメニア、英国、北マケドニア、キプロス、ギリシャ、クロアチア、コソボ、スロバキア、セルビア、チェコ、ハンガリー、フィンランド、ブルガリア、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア

大幅に遅れた布マスク全戸配布

Jiji
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全戸配布する必要ある?

4月1日(水)に開かれた政府の対策本部会合を踏まえ、安倍首相は、全世帯に2枚ずつ布マスクを配布すると発表しました。

来月にかけて、更に1億枚を確保するめどが立ったことから、来週決定する緊急経済対策に、この布マスクの買上げを盛り込むこととし、全国で5,000万余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用し、一住所あたり2枚ずつ配布することといたします。

首相官邸ホームページ「新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回)(2020年4月1日)」より引用

残念なことに、先に配布を開始した妊婦用の布マスクに大量の不良品が見つかったことから、全戸配布用マスクも検品に時間がかかってしまい、配布が完了するのは6月中旬まで大幅にずれ込む見込みとなっています。

モタモタするうちに、緊急事態宣言は5月25日(月)に全面解除となり、店頭のマスクの品薄状態も解消されてきました。布マスクは5月27日(水)時点で全体の25%しか届いていません

ちなみに、うち(東京都江東区)には5月20日(水)に布マスクが届きました。洗って何度も使えるのが布マスクの長所ですが、5枚重ねのマスクなので乾かすのに時間がかかりそうです。

緊急事態宣言の出し遅れ

Jiji
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緊急事態宣言を出すの遅すぎるのだ!

3月13日(金)に新型インフルエンザ等特別措置法(以下「特措法」と略記)が改正されて、新型コロナウイルス感染症にも特措法が適用できるようになりました。せっかく法律改正を急いだのに、緊急事態宣言が出たのは感染拡大がかなり進んだ4月7日(火)のことでした。

特措法では、「全国的かつ急速なまん延により国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあって、積極的疫学調査の結果、感染者の感染経路が特定できない事態が認められたら緊急事態宣言を出す」と定められています。3月28日(土)に政府の対策本部が決定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」で「国内では、すでに感染経路が不明な患者の増加している地域が散発的に発生して」と認識されていたので、緊急事態宣言を出すタイミングは3月下旬でした。

緊急事態宣言の経過
  • 3月13日
    新型インフルエンザ等特別措置法改正
  • 3月26日
    特措法に基づく新型コロナウイルス感染症対策本部の設置
  • 4月7日
    7都府県に緊急事態宣言(5月6日まで)
  • 4月16日
    緊急事態宣言を全国に拡大(5月6日まで)
  • 5月4日
    緊急事態宣言を延長(5月末まで)
  • 5月14日
    39県の緊急事態宣言を解除
  • 5月21日
    関西3府県の緊急事態宣言を解除
  • 5月25日
    関東4都県と北海道の緊急事態宣言を解除

参考:緊急事態宣言の規定について

緊急事態宣言については、新型インフルエンザ等特別措置法第32条第1項に定められています。

政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。

一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
二 新型インフルエンザ等緊急事態措置(第四十六条の規定による措置を除く。)を実施すべき区域
三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要

新型インフルエンザ等の要件(新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令第6条第1項)

当該新型インフルエンザ等にかかった場合の重篤症例の発生頻度が、インフルエンザにかかった場合に比べて相当程度高いと認められること。

新型インフルエンザ等緊急事態の要件(新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令第6条第2項)

積極的疫学調査の結果、次のいずれかに該当する場合。

  • 感染者の感染経路が特定できない場合
  • 感染者が感染症をまん延させるおそれがある行動をとっていた場合など、感染拡大を疑うに足りる正当な理由がある場合

一律10万円給付に決まるまでの混乱とオンライン申請

Jiji
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普及率16%のマイナンバーカードをオンライン申請の条件にするなんて間違ってるのだ!

政府の緊急経済対策として、当初の収入減少世帯への30万円給付から、公明党に寄り切られる形で一律1人10万円給付に変更したのが4月16日(木)のこと。緊急事態宣言の全国拡大と抱き合わせにして体裁をつくろったものの、補正予算案の成立は4月30日(木)にずれ込み、給付開始が遅れました。

また、申請方法として郵送申請だけでなくオンライン申請も用意しましたが、普及率16%(4月1日時点)のマイナンバーカードが必要なため、大部分の国民にはオンライン申請の選択肢はありませんでした

5月25日(月)に緊急事態宣言が全面解除になるまでに、どれだけの人に給付金が届いたのでしょうか。

感染症流行時の検査体制の整備不足

Jiji
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必要な検査はスムーズに実施して欲しいのだ。

日本では、新型コロナ流行の早い段階からPCR検査が受けられないケースが多発し、新たな感染症が流行した際の検査体制が整えられていなかったことが露呈しました。

PCR検査については、検査がしたくても保健所で断られ、やってもらえないという御指摘をたくさん頂いております。

(中略)

来週中に、PCR検査に医療保険を適用いたします。これにより、保健所を経由することなく民間の検査機関に、直接、検査依頼を行うことが可能となります。民間検査機関の検査能力も大幅に増強されます。

首相官邸ホームページ「安倍内閣総理大臣記者会見(2020年2月29日)」より引用

3月6日(金)にPCR検査が保険適用された後も、特に3 月下旬以降に感染者数が急増した大都市部を中心に検査待ちが多発しました。その原因について、専門家会議の新型コロナ対策の状況分析・提言(5 月 4 日)では次のように分析されています。

  • 帰国者・接触者相談センター機能を担っていた保健所の業務過多
  • 地方衛生研究所では新型コロナの検査に回せるリソースが限られる
  • 陽性者の入院先を確保する仕組みが十分機能していない地域があった
  • 検体採取者及び検査実施者のマスクや防護服などの感染防護具等の圧倒的な不足
  • 一般の医療機関がPCR 等検査を行うには都道府県との契約が必要
  • 民間検査会社等に検体を運ぶための特殊な輸送器材が必要

参考:厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 4 日)

5月25日(月)に緊急事態宣言が全面解除された際の首相記者会見では、検査体制の強化については軽く触れられただけでした。次の流行の波が来る前に上記の課題が確実に解消されるか不安が残ります。

同時に、医師が必要と判断した場合には直ちに検査を実施する、検査体制の強化にも引き続き取り組んでまいります。抗原検査の使用が既に始まりましたが、PCR検査についても、民間検査機関への支援に加え、大学にある検査機器を活用させていただくなど、検査機能の拡大を進めます。

首相官邸ホームページ「新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見(2020年5月25日)」より引用

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