相続手続きが楽になる「法定相続情報一覧図の写し」

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相続手続きには、相続人を確定するための書類として、被相続人の出生から亡くなるまでの連続した戸籍と相続人全員の戸籍のセットが必要になります。

一方、2017年5月から、戸籍セットの代わりに、登記官の認証文が付記された法定相続情報一覧図の写しが、相続手続きに使えるようになりました。

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相続人の確定

相続手続きでは、まず法定相続人を確認することが重要です。

相続人の範囲

被相続人の配偶者は常に相続人になります。それ以外で相続人になれる親族は次の表の範囲ですが、実際に相続人になるのは上位の相続人がいない場合に限られます。

相続順位相続人
第1順位直系卑属(世代が最も近い人)
第2順位直系尊属(世代が最も近い人)
第3順位兄弟姉妹※

※既に死亡していた場合などは、その子(被相続人の甥・姪)が代襲相続人になります。

直系卑属、直系尊属

血縁関係のある縦のつながりのある親族のうち、自分より下の世代(子、孫、ひ孫など)が直系卑属で、自分より上の世代(父母、祖父母、曾祖父母など)が直系尊属です。血縁関係のない養子、養父母についても、民法上はそれぞれ直系卑属、直系尊属に該当します。

代襲相続

本来の相続人が被相続人より先に死亡していた場合、あるいは相続欠格や相続廃除によって相続権を失った場合、その相続人の子が代わりの相続人(代襲相続人)になることを代襲相続と言います。第1順位で被相続人の子が既に亡くなっていて孫が相続人になるケースも代襲相続です。

以上のルールに従って法定相続人を確認しますが、相続放棄した人は実際の相続人から除かれます。

法定相続分

相続人が確定すると、それぞれの相続割合(法定相続分)は下の表のようになります(〇が相続人、ーは該当者がいない、空欄は上位者がいて相続人になれないことを示しています)。

配偶者直系卑属直系尊属兄弟姉妹法定相続分
配偶者1/2、直系卑属1/2
直系卑属が全部
配偶者2/3、直系尊属1/3
直系尊属が全部
配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
兄弟姉妹が全部
配偶者が全部

同順位者が複数いる場合は、頭数で均等割りします。代襲相続人の法定相続分は、本来の相続人の法定相続分を代襲相続人の人数で均等割りします。

戸籍のセット

相続人を確認するには、次の戸籍謄(抄)本のセットが必要になります。

  1. 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  2. 相続人全員の現在の戸籍謄(抄)本

詳しくは、次の記事を参考にして下さい。

法定相続情報一覧図の写し

2017年5月29日から、全国の登記所(法務局・地方法務局・支局・出張所)で法定相続情報証明制度がスタートしました。

この制度では、相続人が法定相続情報一覧図を作成して必要書類とともに登記所に申出を行うと、登記官の認証文が付記された法定相続情報一覧図の写しを交付してくれます。上記の戸籍セットの代わりの公的書類として、さまざまな相続手続きや年金手続きに利用できます。

法定相続情報一覧図の写しの例(解説付き、法務局HPの掲載資料「~法定相続情報証明制度について~」からの抜粋)

申出に必要な書類

手続きに必要な書類は次のとおりです。

  1. 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  2. 相続人全員の戸籍謄(抄)本 ※証明日が被相続人の死亡日以降のもの
  3. 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  4. 申出人の住所・氏名を確認できる公的書類
  5. 相続人全員の住民票の写し ※一覧図に相続人の住所を記載する場合のみ
  6. 法定相続情報一覧図

法定相続情報一覧図の様式(Excelファイル)は、法務局HPからダウンロードできます。記載例も掲載されています。

法定相続情報一覧図の様式に関する注意事項

相続税の申告手続きで法定相続情報一覧図を利用する場合、次のような制約があります。

  • 法定相続情報一覧図は(列挙形式ではなく)図形式で作成されていること。
  • 子の続柄について、実子と養子の区別ができるように記載すること。

申出書の提出先

所定の申出書の提出先は、以下の地を管轄する登記所のいずれかを選択できます。手続きは、郵送でも可能です。再交付のことを考慮すると、申出人の住所地を管轄する登記所に提出するのが無難でしょう。

  • 被相続人の最後の住所地
  • 被相続人の死亡時の本籍地
  • 申出人の住所地
  • 被相続人名義の不動産の所在地

法定相続情報一覧図の写しの交付

法定相続情報一覧図の写しの必要数を申出書に記入します。申出から交付まで1~2週間かかります。

法定相続情報一覧図は申出先の登記所に5年間保管されます。その間であれば、上記の申出人は法定相続情報一覧図の写しの再交付を受けることが可能です。

法定相続情報一覧図の写しを使うメリット

法定相続情報一覧図の写しを利用すれば、戸籍セットと比べると、いろいろメリットがあります。

発行手数料が無料

公的書類にしては珍しく、法定相続情報一覧図の写し発行手数料は無料です。

複数の相続手続きを並行して進められる

相続手続きに法定相続情報一覧図の写しを使う一番のメリットは、複数の手続きを並行して進めることができる点です。戸籍セットを使う場合、手続き先に一か所ずつ提出と返却を繰り返すことになり、何倍も時間がかかります。戸籍セットでも提出先の数だけ用意すれば並行して進めることは可能ですが、発行手数料が何倍もかさみます。

戸籍謄本の交付手数料は1通450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本は1通750円です。父の場合、1セットが4通(戸籍1、除籍1、改製原戸籍2通)で合計2,700円かかりました。3つの銀行に口座があったので、もし戸籍セットで並行して手続きを進めるとしたら3倍の交付手数料8,100円がかかります。

郵送で相続手続きする場合にかさばらない

戸籍謄本は1通で2~3枚になるのが普通です。何通もの戸籍のセットはかさばって重くなるので、郵送で相続手続きをする場合には大きめの封筒が必要になり、切手代も余計にかかります。

一方、法定相続情報一覧図の写しは1~2枚ですので、郵送で相続手続きする場合は郵送代の節約になります。

5年間、再交付が可能

法定相続情報一覧図は申出先の登記所に5年間保管されます。5年間は何回でも法定相続情報一覧図の写しの再交付を受けられます。再交付の際の発行手数料も無料です。

法定相続情報一覧図を作成しない選択肢もある

通常は法定相続情報一覧図を作成した方がメリットが多く、特に次のような場合には作成をお勧めします。

  • 複数の銀行に口座がある場合
  • 複数の不動産がある場合
  • 相続税の申告・納税が必要

逆に言えば、銀行口座が一つしかない場合、不動産がない場合、遺産が少なく相続税の申告が不要な場合はメリットが活かせないので、法定相続情報一覧図を作成しないという選択肢もあります。

父親の場合

昨年12月に亡くなった父の場合、戸籍セットを何回も使い回す必要がなく便利そうだったので、はじめは法定相続情報一覧図を作る気満々でした。ですが、書類を多く集めなくてはならないことに気づいて、作るのをやめました。

法定相続情報一覧図では相続人の住所を記載するかしないかは任意です。記載した場合のメリットは、不動産の移転登記の際に住民票の写しの提出を省略できることですが、よくよく手間を考えてみると、移転登記の際に住民票の写しを入手する方が楽なことに気づきました。移転登記では不動産を相続する人(通常は1人)の住民票の写しだけ提出すればよいからです。一方、法定相続情報一覧図の場合は相続人全員の住民票の写しが必要です。移転登記に関係ない相続人にまで住民票の写しを用意してもらうのは気が引けます。

戸籍セットを使い回す手間が残って手続きに時間がかかりましたが、そこは我慢しました。

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