「相続税の申告のしかた」ダイジェスト版

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相続手続きはどれも面倒ですが、特に相続税の手続きは厄介です。国税庁ホームページに「相続税の申告のしかた」という冊子が掲載されているので、一般向けに重要と思われる部分を要約しました。

「相続税の申告のしかた」の内容は毎年アップデートされます。この記事で参考にしたのは令和2年分用(全125ページ)で、令和2年1月から12月までに亡くなった人が対象です。

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はじめに

最初に必読事項が書かれています。

  • 令和2年1月1日から令和2年12月31日までの間に亡くなった人が対象
  • 申告書にマイナンバー(個人番号)を記載する
  • 申告書には各相続人等の本人確認書類の写しを添付する

相続税のあらまし

相続税とは

相続税は、相続遺贈いぞうによって遺産を取得した人に課される税金です。

相続・遺贈

相続は、故人(被相続人)の財産に関する一切の権利義務を相続人が受け継ぐことで、被相続人の死亡によって開始します。

被相続人の遺言書がある場合には、原則として遺言で指定された人(受遺者)が遺産を受け継ぎます。これを遺贈と言います。

相続人等

冊子の中では、「等」が付いている時は、相続人または受遺者という意味です。

相続人

相続人の範囲や順位は、民法によって次のように決められています(法定相続人)。

  • 被相続人の配偶者は、常に相続人(内縁関係にある人は含まない)
  • 配偶者以外の相続人は下表のとおり(上位の相続人がいない場合に限る)
相続順位相続人
第1順位被相続人の直系卑属(世代が最も近い人)
第2順位被相続人の直系尊属(世代が最も近い人)
第3順位被相続人の兄弟姉妹※

※相続人が相続開始前に死亡していた場合などは、その相続人の子が代わりの相続人(代襲相続人)になります。

直系卑属、直系尊属

血縁関係のある縦のつながりのある親族のうち、自分より下の世代(子、孫、ひ孫など)が直系卑属で、自分より上の世代(父母、祖父母、曾祖父母など)が直系尊属です。血縁関係のない養子、養父母についても、民法上はそれぞれ直系卑属、直系尊属に該当します。

相続税の申告

相続税申告が必要なケース

相続税の申告は、取得した遺産の課税価格の合計額遺産に係る基礎控除額を超えた場合に必要になります。

課税価格の合計額

課税される遺産の総額から次の非課税財産等を控除した額

  • 死亡保険金の非課税限度額 500万円×法定相続人の数
  • 死亡退職金の非課税限度額 500万円×法定相続人の数
  • 債務および葬式費用
遺産に係る基礎控除額

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

申告書の提出について

申告書の提出期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内です。

申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。郵送による提出も可能です。

申告書は、相続人が共同で作成・提出しても、別々に作成・提出しても構いません。

相続税がかかる財産の種類

相続税がかかる財産は、次のとおりです。

  1. 相続や遺贈によって取得した財産
  2. みなし相続財産
  3. 相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産
  4. 相続時精算課税制度を適用した贈与財産
みなし相続財産

みなし相続財産とは、死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利など、民法上は相続財産に該当しないものの、税法上は相続財産とみなされて課税対象となる財産のことです。

対象外となる贈与財産

以下の贈与財産については、上記3や4に該当する場合でも、一定の条件を満たせば相続税はかかりません。

  • 住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けた金銭贈与
  • 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた金銭等贈与
  • 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた金銭等贈与

相続税がかからない財産

相続税がかからない財産(非課税財産)のうち、主なものは次のとおりです。

  • 死亡保険金等の一部(500万円×法定相続人の数)(⇒申告書第9表)
  • 死亡退職金等の一部(500万円×法定相続人の数)(⇒申告書第10表)
  • 墓地、墓碑、仏壇、仏具など
  • 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権

相続財産から控除できる債務、葬式費用

被相続人の債務(借入金、未払金など)や被相続人に納税義務のあった税金の未納分は相続財産から控除されます(⇒申告書第13表)。

被相続人の葬式で相続人が負担した費用のうち、お寺への支払い、葬儀社への支払い、タクシー会社などへの支払い、お通夜にかかった費用などは相続財産から控除されます。墓地や墓碑などの購入費用、香典返しの費用、法要にかかった費用などは控除の対象になりません

相続税の計算方法

納付すべき相続税の総額は、課税される遺産総額によって決まり、遺産の分割方法には左右されません。法定相続人が法定相続分に応じて遺産を分割して受け取ったと仮定して、各人ごとの課税価格に相続税の税率を掛けた金額から控除額を差し引いて、全員分を合計します(⇒申告書第2表)。

法定相続分

法定相続分は、民法で定められた相続分のことで、下表のようになります(〇が法定相続人、ーは該当者がいない、空欄は上位者がいて相続人になれない)。

配偶者直系卑属直系尊属兄弟姉妹法定相続分
配偶者1/2、直系卑属1/2
直系卑属が全部
配偶者2/3、直系尊属1/3
直系尊属が全部
配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
兄弟姉妹が全部
配偶者が全部

同順位者が複数いる場合は、頭数で均等割りします。代襲相続人の法定相続分は、本来の相続人の法定相続分を代襲相続人の人数で均等割りします。

各相続人等の相続税額は、それぞれが実際に取得した遺産の課税価格の割合に応じて相続税の総額を分割した金額になります。

相続税の計算手順は次のとおりです。

  1. 各相続人等が取得した遺産の課税価格の計算
  2. 課税される遺産総額の計算
  3. 相続税の総額の計算
  4. 各相続人等が納付すべき相続税額の計算

なお、相続人等が被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者ではない場合、その人の相続税額には2割に相当する金額が加算されます(⇒申告書第4表)。

主な税額控除

相続税の税額控除は、次の順序に従って行います。控除によって相続税の総額がゼロになって納付が不要になっても、申告は必要です。

  1. 暦年課税分の贈与税額控除(⇒申告書第4表の2)
  2. 配偶者の税額軽減(⇒申告書第5表)
  3. 未成年者控除(⇒申告書第6表)
  4. 障害者控除(⇒申告書第6表)
  5. 相次相続控除(⇒申告書第7表)
  6. 外国税額控除(⇒申告書第8表)
  7. 相続時精算課税分の贈与税額控除(⇒申告書第11の2表)
  8. 医療法人持分税額控除(⇒申告書第8の4表)

相続財産の評価

相続財産の種類によって課税価格の評価方法が異なるので、種類別に評価します(⇒申告書第15表)。

相続財産の種類課税価格の評価方法
宅地(路線価地域)路線価図によって評価
宅地(路線価地域以外)固定資産税評価額に評価倍率を掛ける
借地権等国税庁HP「借地権の評価」参照
田畑または山林固定資産税評価額に評価倍率を掛ける
家屋等(自家用)固定資産税評価額と同額
森林の立木樹種、樹齢別に定めている標準価額を基に評価
事業用の機械、器具、農機具等類似品の売買価額や専門家の意見などを参考に評価
上場株式国税庁HP「上場株式の評価」参照
取引相場のない株式・出資取引相場のない株式(出資)の評価明細書により評価
預貯金相続開始日時点の預入残高と既経過利息との合計額
家庭用財産・自動車類似品の売買価額や専門家の意見などを参考に評価
書画・骨とう等類似品の売買価額や専門家の意見などを参考に評価
電話加入権相続開始日の取引価額又は標準価額
既経過利息

預貯金を相続開始日時点で解約した場合に支払われる利息。

Jiji
Jiji

金融機関に残高証明書を請求すると、通常は預入残高しか記載されないのだ。請求の際には、残高と併せて既経過利息の金額も必要だと伝えるべきなのだ。

相続税減額・納税猶予などの特例

次のような特例に該当する場合、相続税の減額や納税猶予・免除などの恩恵を受けられます。特例によって相続税の総額がゼロになって納付が不要になった場合でも、申告は必要です

  • 小規模宅地等の特例
  • 特定計画山林の特例
  • 小規模宅地等の特例及び特定計画山林の特例の併用等
  • 特定受贈同族会社株式等に係る特定事業用資産の特例
  • 農地等についての相続税の納税猶予及び免除等
  • 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等
  • 山林についての相続税の納税猶予及び免除
  • 医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除・税額控除
  • 特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除
  • 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
  • 災害により相続財産に被害を受けた場合の相続税の軽減
Jiji
Jiji

特例を受ける要件は複雑で、申告書の作成も厄介なのだ。税理士を頼った方がいいかもしれないのだ。

災害によって相続財産に被害を受けた場合

申告期限前に災害によって相続財産に被害を受けた場合、課税価格の計算の特例や提出期限の特例を受けられる場合があります。詳細は税務署に問い合わせて下さい。

提出した申告書を訂正する必要がある場合

申告書の提出後に、申告内容に誤りがあることに気づいた場合や相続分などの変更が生じた場合、以下の方法で訂正することができます。

  • 申告した税額が過大だった場合、更生の請求をする
  • 申告した税額が過少だった場合、修正申告書を提出する

相続税の納付

相続税の納付は、原則として金銭一括で、各相続人等が相続分に応じた額を納付します。

納付期限

納付の期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内です(申告書の提出期限と同じ)。

納付が遅れた場合は、延滞税が発生します。

納付手続き

次のような納付方法がありますが、金融機関の窓口で納付するのが一般的です。

  • 被相続人の住所地を管轄する税務署の窓口で納付書を添えて納付
  • 金融機関の窓口で納付書を添えて納付
  • 電子納税(e-Taxホームページ参照)
  • クレジットカード納付(納付税額に応じた決済手数料が必要)
  • コンビニ納付(30万円まで)

税務署または金融機関の窓口で納付する場合、納付書は全国の税務署か管轄税務署管内の金融機関で入手できます。納付書を郵送で取り寄せることはできません。

Jiji
Jiji

納付書は、金融機関に備えていない場合があるので、最寄りの税務署で予め入手しておくのがお勧めなのだ。

金銭一括納付が困難な場合

相続税の金銭一括納付が困難で、一定の要件を満たしている場合には、例外的に延納あるいは物納が認められます。いずれも相続税の申告期限までに手続きが必要です。

相続税の申告書の記載例

申告書の記載の順序

申告書は第1表から第15表までありますが、一般的な人(相続時精算課税適用者または相続税の納税猶予等の適用を受ける人がいない場合)では、作成の順序は次のようになります。

  1. 相続税のかかる財産と債務等について、第9表から第15表を作成
  2. 課税価格の合計額と相続税の総額を計算するため、第1表と第2表を作成
  3. 税額控除の額を計算するため、第4表から第8表を作成
  4. 第1表に3.の税額控除額を転記して、各人の納付すべき相続税額を計算

具体的な記載例

冊子に載っている申告書の具体的な記載例は一例に過ぎないので、ここでは説明を省略します。

申告書の様式

相続税の申告書は、税務署窓口または国税庁ホームページで入手できます。

申告書の作成・提出は、2019年10月から「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」でも可能になりましたが、ソフトはWindowsパソコンにしか対応していません(2021年5月9日現在)。

Jiji
Jiji

相続税の計算は非常に複雑なのだ。e-Taxでは自動計算してくれないので、途中で挫折したのだ。代わりに「AI相続」という無料のウェブソフトを利用して申告書を作成。こちらの方がはるかに使いやすいのだ。

申告書に添付する書類

一般的な人が申告書に添付する書類は次のとおりです。

  1. マイナンバーの本人確認書類(番号確認書類および身元確認書類)のコピー
  2. 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本または図形式の法定相続情報一覧図の写し
  3. 遺言書のコピー
  4. 遺産分割協議書のコピーおよび相続人全員の印鑑登録証明書

上記1と2は添付が必須です。2はコピーしたものでも構いません。3と4はそれぞれ遺言書や遺産分割協議書がある場合に添付します。

4の印鑑登録証明書について、コピー提出可と明記されていませんが、「提出をお願いしている書類」という位置づけなのでコピー提出でも構わないそうです。ただし、特例を受ける場合は原本提出が必要な場合があります(2021年5月24日に国税局電話相談センターで確認)。

Jiji
Jiji

上記のほかに添付した方がよい書類があるのだ。「相続税の申告のためのチェックシート」を参考にして欲しい。

前述した特例を受ける人は、各特例に応じた書類添付が必要です。「相続税の申告のためのチェックシート」の中にある提出書類一覧表を参考にして下さい。

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