
相続税と相続登記(相続による不動産登記)はどちらも相続関連の手続きですが、所管がそれぞれ国税庁と法務省となっていて手続きに違いがあるので、混同しないように注意しましょう。
相続税申告と相続登記申請の違い
相続税の申告と相続登記の申請の手続きの主な違いを表にまとめました。
相続税の申告 | 相続登記の申請 | |
---|---|---|
手続きの窓口 | 管轄の税務署 | 管轄の登記所 |
対象 | 全ての相続財産 | 不動産 |
期限 | 10か月以内 | なし |
押印 | 不要 | 必要(認印でOK) |
マイナンバー | 必要 | 不要 |
本人確認書類 | 番号確認書類と 身元確認書類を提出 | 提出不要 |
添付書類の提出方法 | コピーでOK | 原則、原本を提出 (原本還付が可能) |
遺言書の提出 | 遺言書がある場合は お願いベース | 遺言書がある場合は必要 |
遺産分割協議書および 印鑑登録証明書の提出 | 遺産分割協議書がある 場合はお願いベース | 遺産分割協議書がある場合は必要、 遺産分割協議書がない場合(法定 相続分で遺産分割する場合)は不要 |
相続情報一覧図 | 図形式 実子と養子の区別を記載 | 相続人の住所を記載 |
手続きの窓口
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。
相続による登記申請書の提出先は、不動産の所在地を管轄する登記所です。
登記事務を担当する機関のことで、法務局、地方法務局、支局、出張所の総称です。
対象
相続税申告の対象は、不動産だけにとどまらず、全ての相続財産(遺産)が対象です。
相続による登記申請の対象は、不動産(土地、建物)だけです。
期限
相続税の申告期限は、相続開始(被相続人の死亡)があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
相続による登記申請の期限はありません。しかし、登記をしない(名義変更をしない)と不動産を売却できないなどのデメリットがあります。
2021年4月に不動産登記法等が改正されて、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請することが義務化されます。2024年頃に実施される見通しです。
押印
相続税の申告では、令和3年度税制改正によって、申告書への押印は不要になりました。
相続による登記申請では、引き続き、申請書への押印が必要です。認印でOKです。
マイナンバー
相続税の申告では、申告書に相続人全員のマイナンバー(個人番号)を記入します。
相続による登記申請では、マイナンバーは必要ありません。そもそも、マイナンバーの利用範囲に不動産登記は含まれていないので、申請書にも記入せず、添付書類の住民票の写しはマイナンバーが記載されていないものを提出します。
本人確認書類
相続税の申告では、本人確認書類として相続人全員の番号確認書類および身元確認書類のコピーを提出します。
相続による登記申請では、本人確認書類を提出する必要はありません。

登記申請書は郵送したので、本人確認書類なしでもあまり気にならなかった。窓口申請の場合でも必要ないとしたら、ちょっと不思議な感じがするのだ。
添付書類の提出方法
相続税の申告では、添付書類はコピーの提出でOKです。
相続による登記申請では、原則として、添付書類は原本を提出します。原本還付の手続きをすれば、登記完了後に原本を返却してくれます。
遺言書の提出
遺言書のとおりに遺産を分割する場合は、遺言書を添付します。
相続税の申告では、「提出をお願いしている」という扱いで義務ではありませんが、添付した方がよいと思われます。
相続による登記申請では、遺言書がある場合は必ず添付します。
遺産分割協議書および印鑑登録証明書の提出
遺産分割協議書のとおりに遺産を分割する場合は、遺産分割協議書を添付します。
相続税の申告では、「提出をお願いしている」という扱いで義務ではありませんが、添付した方がよいと思われます。例外として、特例を受ける場合は提出が義務となる場合があります。
相続による登記申請では、遺産分割協議書のとおりに遺産を分割する場合は必ず添付します。法定相続分で遺産分割する場合や相続人がひとりの場合は添付不要です。
相続情報一覧図
相続税申告でも相続登記申請でも、被相続人や相続人の戸籍謄本を添付する代わりに相続情報一覧図の写しを添付することが認められています。
相続税の申告では、(列挙形式ではなく)図形式の相続情報一覧図であること、子の続柄について実子と養子の区別ができるように記載されたものが必要です。
相続による登記申請では、住所証明情報として添付する場合、相続人の住所が記載されたものが必要です。
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